106万円の壁は、パートと副業を掛け持ちする際に最も実務的な社会保険の制度です。主に厚生年金保険と健康保険の加入義務が発生する年収ラインを指します。
100万円を超える年収では「一般的には問題ない」と思われやすいですが、106万円を超えると状況が変わります。これは2016年の法改正で導入された制度で、特に大企業勤務者に影響があります。
例えば、A社で月8万円のパート勤務をしながら、副業で月1万円の報酬を得ている場合、合計月9万円(年108万円)になります。この時点で106万の壁を超えており、条件によっては新たな社会保険加入が必須となる可能性があります。
社会保険には複数の「壁」が存在し、106万と130万では適用される制度が異なります。
106万の壁は、以下の全ての条件を満たした場合に適用されます:
この4条件をクリアするとその勤務先で厚生年金保険と健康保険への加入が義務付けられます。加入者は毎月の給与から約15%程度の保険料が控除されます。月9万円のパート収入であれば、毎月約1万3,500円が天引きされる計算です。
130万の壁は家族の扶養制度に関わるものです。被扶養者として扶養に入っている場合、年収が130万円を超えると扶養を外れます。ここでいう年収には副業も含まれます。パートと副業の合計が130万円未満であれば、配偶者や親の扶養に入ったまま社会保険料の自己負担がありません。
つまり、106万円を超えても130万円以下であれば、106万の壁の条件を満たさない中小企業のパートであれば扶養のままです。しかし大企業なら106万円時点で加入義務が生じます。
大企業でパート勤務をしている場合、106万の壁は他人事ではありません。実名では出せませんが、従業員数500人以上の企業(小売大手、外食チェーン、製造業大手など)で副業をしながらパートしている方は注意が必要です。
106万円を超えた場合の社会保険加入は自動的に進みます。パート先から被保険者資格を取得するための届出が行われ、その企業の健康保険と厚生年金に加入することになります。副業先での加入状況には影響しません。
実例で見てみましょう:
この場合、コンビニのパート先で厚生年金・健康保険に加入義務が発生します。副業の36万円は関係ありません。パート先での保険加入後、副業分の収入で個別に国民健康保険や国民年金に加入する二重加入は通常発生しません。
ただし、2つ以上の企業でそれぞれ20時間以上の勤務をしている場合は複雑になります。この場合、給与の多い企業で加入するという制度があります。
2024年10月1日の改正により、社会保険適用拡大の対象企業の範囲が縮小されました。従来501人以上が対象だったのに対し、一定の経過措置を経て基準が調整される見通しです。ただし、現時点では101人以上の企業でも条件次第で適用されるケースが増えており、実質的には106万の壁への該当者が増加しています。
保険料率も毎年微調整されています。2024年度の厚生年金保険料率は18.3%(労使折半で9.15%ずつ)、健康保険料率は組合によって異なりますが平均9%程度です。月10万円の給与であれば、月約9,150円の厚生年金料と月4,500円程度の健康保険料が控除されることになります。
重要な点として、社会保険に加入すると保険料の負担は増えますが、将来の年金額や医療保障が厚くなります。40年間の加入実績が反映される老齢厚生年金は、国民年金のみの場合より月2〜3万円程度高くなる可能性があります。
106万の壁を超えた場合、パート先で年末調整の際に「給与以外の所得あり」を申告する必要があります。副業所得が20万円を超える場合は確定申告が必須です。月1万円の副業なら年12万円なので申告は不要ですが、パート先には報告することが推奨されます。
実際には、パート先の企業が給与計算時に社会保険加入の判定をしているため、経営者層は106万円ラインを認識しています。「副業していることを知られたくない」という心理から報告を避けるケースがありますが、社会保険加入のタイミングで年収把握される可能性があります。
月給の変動がある場合(シフト制など)は、3ヶ月の平均が8.8万円以上かどうかで判定されます。月によって7万円と10万円を行き来する場合は、平均8.5万円で基準以下となり加入義務が生じないケースもあります。
パート先に副業を認めていない就業規則がある場合、社会保険加入の手続きで発覚するリスクがあります。事前に人事に相談するか、副業が許可されている企業への転職を検討する判断も必要になる可能性があります。
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